この記事では、次の目次で構成されています。
①ごあいさつ
Baba-Kohei-Blogにようこそ!当サイトは、主にドイツ文化圏に関係する書物や映画などを紹介するブログです。「紹介する」といっても、私の読書体験と独断の感想が中心となっているため、決して学術論文のような体系的で精度の高い情報は提示しておりません。
とはいえ、このようなゆるいブログだからこそ、大胆に言えることが存在することも確かです。その際、書物などを紹介する基準は「直感と印象」だけです。ですので、ブログ内にはツッコミどころ満載の「空白」も意図的に織り込んでいます。
読者の皆さんは、その空白に「私だったらこう考えるんだけどな」という素直な印象を大事にして、このブログを新たな思考のきっかけにして頂ければ、私としては幸いです。
②当サイトの特徴
当サイト開設に至った経緯をお話します。
「これまで読んだドイツの人文系の本や観た映画・展覧会などの感想をもっと発信したい」。これだけが当サイトの基本コンセプトです。このブログの読者は、本ブログから「普通では見聞きしないドイツに関わる書物や視覚文化」に触れることができます。
私自身は学術論文やツイッターで自分の研究について紹介してきましたが、そこでジレンマを抱えていました。
学術論文では専門書が中心なので読者が専門的な層に限られてしまいます。また、論文で先行研究を紹介しないといけないという縛りから、そこで取りこぼした書物もたくさんありました。私の本棚を見回すと「積ん読」の山が増えていました。これは研究者あるあるネタですが……。
ツイッターでは、限定された文字数から書物や映画などの紹介が十分にできないため、私のツイッター記事を読んだ方々にいまいち私の深い意図が伝わらないという不満がありました。
そこで、私の読書メモも兼ねて、学術論文とツイッターの中間を取った「ブログ」という形式で発信することを決意しました。ブログ形式であれば、準備に時間をかけずに気軽に発信でき、かつ文章の背景・主張・結論を立体的に構築することができます。この「立体的な文章」では、1冊の本の感想のみを伝える他の書評ブログと異なり、時には本の1章だけ(あるいは映画の一場面だけ)をピックアップしたり、ある一文の概念(キーワード)について色々試行錯誤する、ということもあります。これが当サイトの読者との思考共有につながります。ある読者は私の記事に対し共感するし、ある読者はそれに批判的にもなるでしょう。そしてその両方の反応はどちらも正解なのです。そこから生産的な議論が生まれます。
ドイツの哲学者ヘーゲルの弁証法では、「テーゼ(主張)→アンチテーゼ(反定立・反論)→ジンテーゼ(総合)」という図式(ないしは「精神運動」)がありますが、これは人間の営みともいえます。つまり、赤ん坊から幼年期へと成長し、幼年期から青年期へと発展し、青年期から壮年期へと成熟し、壮年期から老年期に至る過程で、人間は考えを変えていくわけです。青年期では自由主義の左翼だった人が、その途中で絶望し、壮年期では保守的な右翼になるという実例はよくありますし、その逆もまた枚挙にいとまがありません。
主張と反論を議論という形で葛藤させた結果、「ジンテーゼ」(総合)という最終局面が生まれ、主張も反論もお互いを排除しあうことなく、部分的に求め合いながらより高度な結論へと至ることができます(このブログがそこまで行けるかは甚だ疑問ですが……)。
③ブログ著者のこと
私自身は、「ヘーゲル『美学講義』における造形芸術の記述の問題」について修士論文を提出し、文学修士としてドイツ文学界隈で20年間逍遥してきたドイツ文学研究者です。2004年にロータリー奨学生としてドイツのコンスタンツ大学に3年半留学し、今は東京にある複数の大学のドイツ語非常勤講師として苦しくも楽しく暮らしています。現在は「ドイツの百科事典における日本言説」というテーマで博士論文執筆中です。
④当サイトの構成
以下の項目はまだ仮のものです。そのため、ここには、ドイツ以外のことも記載される可能性は十分にありますし、項目変更の予定もあります。
- 1)ドイツ文学:ここでは、面白いと思ったドイツの小説や文学論が紹介されます。マニエリスム・ロマン主義・表現主義など
- 2)ドイツ思想・美学:ヘーゲルやグスタフ・ルネ・ホッケ、そこから派生したウィーン学派などが中心です。形象学(イメージ学)についても言及する予定です。
- 3)ドイツ映画・芸術:最近観た映画、美術館のことなどが中心です。
- 4)日独比較文化:比較文化の本やケンペルやシーボルト、ドイツの百科事典の日本項目などの紹介。
- 5)ドイツ文化・時事:ドイツ語圏の歴史、旅行の記憶、生活文化のこと、新聞ネタなどの紹介。
- 6)ドイツ語教育:私の作ったドイツ語文法教科書や、ドイツ語文法のことなどの紹介。
- 7)その他・雑観など:日常のぼやき、上記の項目に入らないテーマを扱います。
- 8)私の仕事:論文や著作など、これまでの仕事の成果の紹介。
以上はまだ準備中のものもありますが、ゆっくりと更新予定です。
⑤おわりに
現在は「不寛容な社会」とか「格差のある社会」とか「同調圧力を強要する社会」などと言われます。私自身も、人生で何度かこのような苦境を経験しました。
しかし、フランスの作家ジャン=ポール・サルトルの名言が、今こそしぶとく鳴り響くべきです。
「自分の時代が作家の唯一の機会なのだ。(…)我々は、我々の時代の何ものをも失いたくない。もっといい時代はあるかも知れないが、これは我々の時代なのだ。我々はこの戦争、おそらくはこの革命のただ中に、この生を生きるよりほかはないのである」。
(桑原武夫編『一日一言』(岩波新書)より引用)
これは、第二次大戦中、フランスに侵入したナチス・ドイツに抵抗したこともあるサルトルが発した言葉です。
そして、この140年も前に、ドイツの詩人ヘルダーリンは『パトモス』という詩で高らかにこう歌いました。
「だが危機があるところには、救いもまた育つのだ」
(池内紀ほか編『ドイツ名句事典』(大修館書店)よりほぼそのまま引用)
これは有名な格言ですが、「危機と救い」という対概念が絶妙です。
そのため当サイトでは、「鬱屈した時こそ、別の角度から見たら風景が変わる」ことを祈念しながら綴られています。読者の皆さんには、気軽にBaba-Kohei-Blogを楽しんで頂ければと思います。
ブログ著者より